こんにちは。shiroshiroです。
昨日、カルナバイオサイエンスから増資のIRが発表されました。
2019年07月11日 IR情報
「行使価額修正条項付き第18回新株予約権(第三者割当て)の発行及びコミットメント条項付き第三者割当て契約に関するお知らせ」を掲載しました。
https://www.carnabio.com/japanese/ir/news/2019.html#pr765
カルナバイオサイエンスは、先日のギリアドとの提携によって大幅高をしていた企業です。当ブログでも解説を行っておりますので、ご覧になってください。 そーせいグループ株式会社の業績とおもなIRについてまとめています。 Q1決算短信 Q2決算短信 Q3決算短信 Q4決算短信 2021年12月期のそーせいグループ(業績・IR) 2022年12月期業績 ... 続きを見る
2022年12月期のそーせいグループ(業績・IR)
バイオ株と増資は切っても切り離せないものです。
バイオ投資家を名乗るなら、被弾の一つは覚悟しないといけません。本日はこのIRの内容について、見ていきましょう。
見出し
・増資IRの内容を読んでいく
・なぜこのタイミングで出た?
・気になるスキームの内容
増資IRの内容を読んでいく
増資とひとことで言っても、その方法は様々です。
今回は「第三者割当て増資」ということで、株主でもなく、公募でもなく、特定の第三者に増資に係る金額をもってもらうことになります。
1枚目以外にも大事なポイントは書いていますが、要約すると↓のようになります。
潜在株式数:1,625,000株
当初行使価格:2,805円
資金調達額:45億5,654万円
割当予定先:メリルリンチ日本証券
最大希薄化率:15.01%
まずは、トレーダーの視点から行くと株価15%下落するということですね。いきなり被弾するのですから、たまったものではないです。
ただ、実際は翌日の株価が数字通りに下落するというわけではありません。
資金調達の理由等で「運転資金の確保」ですと、自転車操業を嫌気されて、数字以上に下がります。
逆に「次の戦略の為の投資」という内容ですと、資金調達をポジティブに受け止められて、そこまで下がらないこともあります。
では、今回の増資資金の使い道はと言いますと、
①前臨床試験の費用
②第Ⅰ相試験の費用
③新規パイプラインの創製・導入
とのことです。文章中には、「2つの BTK 阻害剤と同様に前臨床試験を実施する費用に充当する予定です。 」ともあるように、"AS-0871"と"AS-1763"のBTK阻害剤を前臨床(Preclinical)から第1相臨床試験(Clinical)まで持っていこうというわけですね。
なお、「③新規品の創製と導入」とありますが、どういうことでしょうか。文中では、
新規化合物ライブラリの購入、新規誘導体の合成委託費、薬物動態や薬効試験等の外注委託費の支払い、社内における化学合成、薬理研究等の人件費、試薬・消耗品の購入費用、及び人員拡充等に充当
もしくは、
アカデミアとの共同研究のための支出に充当し、このような目的に合致する新規パイプラインの導入、共同研究に係る費用等にも充当する予定です。
ということなので、3点とも今後の投資に使うという位置づけになりますね。
なぜこのタイミングで出た?
さて、今後の積極的な投資に使っていくという文章でしたが、株価はどのように受け止めているでしょうか。
前場終値で△20.7%安の下落ですね(後場ストップ安をつけました)。乱高下している時期でしたからやむを得ないかもしれないです。
しかし、なぜこのタイミングで増資IRを出したのでしょうか?
経営陣側からすれば、増資を出すタイミングというのは、
①資金が足りなくなるとき
②新規投資の為にどうしても資金が必要なとき
③資金が効率的に調達できるとき
の3点と思います。そして、今回①はありません。ギリアド提携で21億円が入るからです。
ですので、②か③ですが、③が一番大きかったように思えます。要は株価が高く、より大きな金額を調達できるということが重要だったように見えます。
(結果的には、ギリアド後の大幅高に飛びついた人が犠牲になったんですがね…)
気になるスキームの内容
さて、ここまで一般的な内容をお話してきましたが、詳細のお話をします。
IRのタイトルにあるように「行使価額修正条項付き新株予約権」とあります。
これは45億円一括で受け取る内容ではありません。受け取る金額が変化します。
要約すると以下の通りです。
・カルナバイオが新株予約権の行使数を指定→メリルリンチが払い込み
・指定には期間・数量ともに制限がある。
・行使価額はその日の終値の92%相当。
・92%の価格が下限行使価額(1,683円)を下回る場合、1,683円で固定。
・指定から60取引日期間中に下限行使価額の120%相当額を下回った場合、メリルリンチは行使しないことが出来る。
さて、この条件でカルナバイオはいくら手にするでしょうか?
このスキームは株価が上がれば、カルナバイオに有利に働きます。しかし、株価が下がった時どうなるかわかりません。
MSワラントの類は、証券会社が事前に空売りして、株価を下げた後で、新株予約権を行使して安値で買うのがよくある手です。
前回16回と17回もほぼ同様のスキームで、額面23.8億円のところ、調達額15.9億円でした。
当時、株価はじっくり下がっていきましたし、下限にはほぼ到達しませんでした。ただ乱高下の予想される現在は少し不安です。
全額下限での成立の場合、45.5億円から27.3億円まで目減りします。下限を大きく突き破ったら…どうなるかわかりません。
以上で、増資の話は終わりです。
ただ、ギリアド提携を材料にして、条件改善を図るということはできなかったのでしょうかね。すこし苦々しい内容になってしまいました。
当ブログの読者がこの増資を被弾していないことを願います。そうでなくても、増資しそうなタイミングには十分注意しましょう。
おわり