こんにちは。shiroshiroです。
本日はあるケモカインに関する総説論文(すでに公表されている論文をまとめて整理をした論文)が出てきましたので、それをフォローします。
その論文は、
Chemokine receptor crystal structures: what can be learnt from them?
ケモカイン受容体結晶構造それらから何を学ぶことができるか?
そーせい 総説論文 / ケモカイン / CXCR4
Chemokine receptor crystal structures: what can be learnt from them?
ケモカイン受容体結晶構造それらから何を学ぶことができるか?1stはアムステルダム自由大Marta Arimont氏、HepからChris de Graaf氏。CGはHep提供。https://t.co/pwCncmxzHz
— Shiroshiro(休職中) (@Shiroshiro4565) July 4, 2019
アムステルダム自由大学の論文ですが、共同著者にHeptaresからChris de Graaf氏が出ており、CG提供にもHeptaresの名があります。なので、これを読んで周辺研究と最新状況を見ようという魂胆です。
見出し
・そーせいの現状
・ケモカインの最新状況
・世に出していないそーせいの秘蔵品
そーせいの現状
以前の記事でも多少書かせていただきましたが、現在、そーせいはKymab(カイマブ)社と共同で、CXCR4 mAb(KY1051)というモノクローナル抗体(例:オプジーボ)をがん領域で開発しようと研究しています。(HP参照)
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もともとはCCR9というケモカイン受容体を先にターゲットにしており、その結晶構造の解析に成功したとして、権威あるNature誌に掲載されました。
しかしそこから先は、前臨床に進んでいるというのはわかるのですが、そこからあまり情報が出てきていないのが現状です。
ケモカインの最新状況
話題をケモカインの創設論文に移しますが、ケモカイン受容体ファミリーはGPCRクラスAに属するGPCR最大のファミリーの一つです。
白血球の活性化や分化・遊走、造血幹細胞の誘導を制御するなど、重要な役割を持ちます。具体的には、乾癬(かんせん)、リウマチ、動脈硬化症、アレルギーを含む多数の免疫疾患および自己免疫疾患、がんにおいても重要なようです。
乾癬、リウマチときますと以前にも紹介した世界一売れている薬、アッヴィ社のリウマチ治療薬ヒュミラですね。大きな市場を持っています。
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ですので、生理学的にも病理学的にも非常に重要なターゲットになります。
しかしながら、米国食品医薬品局(FDA)が承認した薬は、
・Plerixafor (プレリキサフォル:CXCR4)
・Maraviroc (マラビロック:CCR5)
・Mogamulizumab (モガムリズマブ:CCR4)
のわずか3種類です。そーせいのIRから3年がたちましたが、モガリズマブの1種だけ増えたみたいです。ケモカイン受容体に関する創薬は、非常に難航しているのが見て取れます。
構造に関する報告は早いもので2010年前後ですが、NMR(核磁気共鳴)やX線結晶学アプローチの本格化、結晶化の話題が目立ち始めるのは2015年以降です。構造が分かり始めたのもごく最近ということです。
そして、現在ケモカイン受容体の結晶構造が利用可能なものは、論文によると、
CCR5、CCR2、CCR9、US28、CXCR4の5種類です。ケモカイン受容体は全体で28種あるとのことなので、20%弱に満たないです。
総説論文では、「これらを要約し、創薬におけるケモカイン受容体構造の数多くの応用例、結晶構造に頼るときに遭遇する課題と落とし穴について説明する。」という内容です。
ただ「応用例」は奥が深すぎるので省略します。「課題と落とし穴」というのは、結晶の解像度の問題についてでした。研究者が利用するための内容でこちらも省略です。
世に出していないそーせいの秘蔵品
以上より、ケモカイン受容体は、まだ5種の受容体の結晶構造しかありません。
というのはうそです。
ごめんなさい。ここ最近のそーせいの資料によって、それ以外のケモカイン受容体の結晶構造をすでに把握していることが分かっています。
6月21日にそーせいHP上の”知識”のページで公開されたものを覚えておりますでしょうか?「SBDDを活用したA2AR拮抗薬 AZD4635(HTL1071)の創薬」というものです。
ここには「SoseiHeptares > 260 Structures」とコメント付きで、GPCRの枝にマークをつけて構造を把握できているような書き方をしています。
この図と、一般に出回っている図を重ねて比較をしてみますと、上記5種類以外に
CCR6、CXCR2のこの二つはすでに分かっているようです。(すごい見づらいけどたぶんあっているはず)
上の章であれだけ苦労していると書いているはずですが、この会社は裏でいったい何をしているのでしょうか。
もちろんこの二つは総説論文には出ていません。そーせいHeptaresの秘蔵品です。そして、これがおそらくStaR®テクノロジーの片りんです。
結晶を作れば作るほど、リガンドとの結合条件を知れば知るほど、28あるサブファミリーの挙動の類似点と相違点が見え、ケモカインの理解度が加速度的に増していくはずです。
お披露目される瞬間を楽しみにしたいと思います。
おわり