「バイオ株」と「バブル」のあれこれを勝手につぶやく投資サイト

Shiroshiroのバイオ株ノート

アッヴィ そーせいグループ その他

そーせいM1DLBポスター発表②~バイオマーカーで成功率UPへ!

こんにちは。shiroshiroです。

本日は後半です。7月22日に出た知識ページの内、もう一つのポスター発表を取り上げます。

Basal forebrain volumes predict circuit specific functional sensitivity to muscarinic M 1 receptor antagonist biperiden on cognition
Pradeep J. Nathan PhD 1,4,5 , Geor Bakker PhD 1,2,3
1 Sosei Heptares, Cambridge, United Kingdom,
[ポスターリンク]
アルツハイマー病国際会議(AAIC2019)のポスター発表。1st authorがHeptaresのPradeep J. Nathan氏、2ndがGeor Bakker氏です。

日本語訳は、
”前脳基底核体積を指標とした、認知力に関するM1受容体拮抗薬ビペリデンの回路特異的実効感度予測”

……頭が勝手に拒否しそうなタイトルです。

こちらも先にツイッターで書きましたが、4月のポスターとほぼ同じ内容です。

難解なタイトルですが、一つ一つ見ていきましょう。

見出し
・バイオマーカーの力
・背景(コリン神経系とは)
・結果

バイオマーカーの力

創薬において重要な言葉のひとつに「バイオマーカー」と呼ばれる言葉があります。

・バイオマーカー:血液や尿、組織などから調べたデータで、病気の変化や治療に対する反応をみる指標のこと

なぜ重要かというと、バイオマーカーがあれば、薬の効果が一目でわかるからです。逆にバイオマーカーが無いと、何の当てもなく患者さんを調べることになります。

 

このポスターですが、結論から先に言いましょう。

「M1およびM4受容体の研究に役立つ潜在的なバイオマーカーを見つけた。」

ということが書かれています。なので、今後M1、M4を考えていくうえで、このバイオマーカーが有効に働けば、研究を大きく加速させることが出来るかもしれないことになります。

 

バイオマーカーの効果を見てみましょう。参考文献を用意しました。

医薬品開発におけるバイオマーカーの役割
http://www.jpma.or.jp/opir/research/rs_057/paper_57.pdf (4.6MB)
林 邦彦(医薬産業政策研究所 主任研究員)医薬産業政策研究所リサーチペーパー・シリーズ

この文献の中で、まず治験内でバイオマーカーを使用している割合が書かれています。2002年から2009年の期間にClinical Trialsに登録された治験40,172件を対象にした結果。

2009年でのバイオマーカー利用率が10%ほどとのことです。あまり使われていないですね。

続いてはバイオマーカーによる効果です。

Clinical Trialsのうち、評価対象として抗がん剤801剤(バイオマーカー利用114剤(14.2%)、非利用687剤(86.7%))で以下のような構成になっています。

治験 Ⅰ相 Ⅱ相 Ⅲ相
バイオマーカー 利用 非利用 利用 非利用 利用 非利用
対象数 114 687 58 300 20 74

そして、次相への移行確率を調べた結果がこちらです。

素晴らしいですね。どの相においてもバイオマーカーを利用した治験のほうが、次相への移行確率が大きく上がっています。Ⅲ相に至っては30%超の上昇率です。上市を目前にこの結果はとても心強いですね。

背景(コリン神経系とは)

結論とおいしい部分を最初にすべて書いてしまいましたので、あとは流しで行きましょう。

背景です。

前脳基底核(以下BF:Basal Forebrain(マイネルト基底核))は、下図のCh4ですが、M1のコリン仮説でいうコリン作動性ニューロンのおもな供給源になっており、脳全体に行き届くようになっています。

しかしBFの体積の減少が、アルツハイマーにおける認知機能の低下を速めるそうです。

BF(下図Ch4)の核体積とM1受容体との感受性は不明ですが、この関係が、認知障害に関して怪しいと検証を行ったそうです。


※引用元:薬剤師.comアセチルコリン神経系より https://kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei32.php

参加者は下図の通り、健常者30名、認知障害者29名。初回訪問時にプラセボ薬投与後、7日後の2回目訪問時はビペリデン4mgを投与して実験は行われました。

結果

最後に結果ですが、その前に状況を整理したいと思います。

「M1受容体作動薬HTL0018318」「抗コリン作用性・M1受容体拮抗薬ピベリデン」この二つの違いです。

[M1受容体作動薬HTL0018318]
・M1受容体のスイッチをONにする薬
・アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
・アセチルコリンのエステル化を防ぎ、脳内アセチルコリンを増やす作用
→コリン作動性神経系を賦活させ、アルツハイマー型認知症の症状を遅らせる

[抗コリン作用性・M1受容体拮抗薬ピベリデン]
・M1受容体のスイッチをOFFにする薬
・アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合することを阻害する作用
→便秘、口の渇き、胃部不快感等、神経症状の副作用

となります。雑ですがビペリデンの投与は、HTL0018318と逆の作用と理解してください。

まず、前脳基底核(CH4)における健常者の結果です。ビペリデンの投与によって、OTS(One Touch Stockings of Cambridge)のスコアが悪くなりました。(上側)

特に、CH4の体積が小さい人は、ΔOTS(2回目訪問時スコアと初回訪問時スコアの差)がマイナスになり、ビペリデンによる悪化が顕著です。(下側)

その為、"Smaller CH4 BF volume predicted greater impairment in planning"CH4 BFの量が少ないほど、より大きな減損が予測されるとしています。

次は、認知障害者によるCH1,CH2,CH3の結果です。(CH1~3の詳細は「アセチルコリンの神経核」から参照ください。)

ビペリデンの投与によって、VRM(Verbal Recognition Memory)スコアが悪くなりPAL(Paired Associate Learning)エラー数が増えています。

そしてここでも、CH1,CH2,CH3の体積が小さい人ほど、ΔVRMのスコア悪化とΔPALのエラー数増加につながるそうです。

 

以上から、ポスターの結論ですが、

・計画と陳述記憶(言語、視覚の両方)は、特にM1による感受性が強かった。
・CH4およびCH1,2,3核体積は、M1受容体の拮抗作用に対する認知反応と関連していた。
・前脳基底核の体積は、M1およびM4受容体作動薬や、ポジティブアロステリックモジュレータを含むコリン作動系を標的とする薬物の優れた認知効果を予測する潜在的なバイオマーカーとなり得る。

長いです。

「前脳基底核の体積は、認知症の回復度合いを予想するバイオマーカーになり得る。」というくらいに割り切ることにします。

体積が大きい人は認知症の進行が遅く、体積の小さい人は認知症の進行が速く、薬の投与で効果が出やすいのでしょうか。

調べるほど、疑問が増えそうです。流すと言いながら、全然ながせてないですね。

お付き合いいただきまして、ありがとうございました。

 

おわり

 

なぜそーせいがいいの!?理由は「note」で好評発売中!

-アッヴィ, そーせいグループ, その他

Copyright© Shiroshiroのバイオ株ノート , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.