こんにちは。shiroshiroです。
毎日バイオ界隈を驚かせるニュースが多くて、すごいですね。
本日はそーせいグループにも影響を与えるであろう昨夜のニュースを取り上げます。
2019/6/25 21:45 米製薬アッヴィ、アイルランドのアラガン買収 6兆円超
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46571760V20C19A6TJ2000/
米アッヴィ社がアイルランドのアラガンを買収しました。その総額がなんと630億ドル(約6兆7000億円)。アラガンと言えば、そーせいにとってM1、M4、M1/M4の導出先です。
何が起こるでしょうか?
見出し
・アッヴィとアラガン、両社の特徴は
・アッヴィの買収資料は何を語るか
・どうなるそーせい?
アッヴィとアラガン、両社の特徴は
海外の企業はまずは両社の簡単な情報を集めてみました。業績は2018年Q4のものです。アッヴィ社の設立はアボット・ラボラトリーズ社のスピンオフからできているので、非常に最近です。
アッヴィ社 | アラガン社 | |
設立年 | 2012年 | 1983年 |
本拠地 | 米国・ノースシカゴ | アイルランド・ダブリン |
従業員数 | 30000人 | 16900人 |
時価総額 (買収発表前) |
115,977百万ドル | 42,474百万ドル |
売上高 | 32,753百万ドル | 15,787百万ドル |
営業利益 | 6,383百万ドル | -6,049百万ドル |
税引前利益 | 5,197百万ドル | -6,856百万ドル |
当期利益 | 5,687百万ドル | -5,096百万ドル |
研究開発費 | 10,329百万ドル | 2,266百万ドル |
総資産 | 59,352百万ドル | 101,787百万ドル |
現金同等物 | 7,289百万ドル | 880百万ドル |
自己資本 | -8446百万ドル | 65,114百万ドル |
代表製品 | ヒュミラ(抗リウマチ剤) | ボトックス(しわ取り薬) |
こうしてみますと、やはりアッヴィ社のほうが規模的には大きいですね。ただそこまで圧倒的ではないです。翌日の値動きで時価総額は2:1あたりまで縮まりました。
やはり見るべきは利益の部分でしょうか、アッヴィ社は6000億円ほど稼いでいるのに対し、アラガンは逆に5500億円の赤字です。
それを象徴するかのように、研究開発費についてはアッヴィがアラガンの約5倍まで差をつけています。やはりヒュミラがもたらす利益は莫大なものであるといえるでしょう。
アッヴィの買収資料は何を語るか
アッヴィ社のホームページでは、この発表に合わせて特設ページを作っています。また、投資家プレゼンテーションの資料もありますので、そこから中身を見ていきます。
タイトルからして、"Creating a New Diversified Biopharmaceutical Company"(新しく多様性のあるバイオ医薬品会社の創設)とあるように、規模と多角化を目指していますね。
そして、4ページ目。もう初めからこのディールの狙いを書いています。1から4の標題を順に訳していくと
①非常に説得力のある価値で魅力的で耐久性のある成長資産 を取得するためのユニークな機会
②AbbVieの成長プラットフォームに即時の規模と収益性を提供
2020年には300億ドル以上の売上を記録し、業界最高の成長が今後10年間で見込まれる
③契約は2023年米国Humira LOE(=Loss of exclusivity : 独占機関の満了)の影響を軽減する
④実質的な株主価値創造の可能性
つまり、①多角化、②さらなる成長、③ヒュミラ特許切れ対策、④シナジー効果というわけですね。
なお、Q&Aでは次のようにアッヴィは答えています。
Q. このディールはいつ終了すると予想しますか?
A. 規制当局およびAllerganの株主の承認を条件として、2020年初めまでに取引を完了する予定です。
Q. このサイズのディールを、小規模なボルトオン買収と比較して実行する利点はなんですか?
A. Allerganの市場に出ている多様な製品ポートフォリオで、Abbvieのプラットフォームを即座に拡大できます。小規模なボルトオン買収は将来の成長の機会を提供しますが、同時にかなりの研究開発投資を必要とします。この取引は即座に説得力のある戦略的価値を提供できます。
Q. 取引に関する最大のリスクとはなんですか?
A. この規模の取引には、一連の規制当局の承認と統合の複雑さがあります。ただ、両社ともに高度な経験を持つ企業なので、成立することを期待しています。
概要はこのようなところでよいでしょう。次が大事なところです。
どうなるそーせい?
アラガンに対して、M1、M4、M1/4を導出しているそーせい。これまでにもさまざまな紆余曲折を経ており、今回のディールもどう影響を与えるかわかりません。スライドを確認していきましょう。
まず、6ページ目、各分野ごとに触れているのですが、赤枠で「AllerganのNeuroscienceポートフォリオをAbbVieの研究開発能力と結びつける機会」と書いています。この記述はNeuroscience(神経科学)分野のみです。
次に、17ページ目、両社のポートフォリオを合わせている部分ですが、赤枠「アルツハイマー病とパーキンソン病で増大するアンメットニーズに対処するための疾患生物学の新分野の評価」とあります。
少なくとも、アッヴィ社はアルツハイマー、パーキンソン病を構想外にはしていないですね。(当然と思いますが)
そして、22ページ目です。そーせいの候補薬である2物質がありますね。AGN-242626がM4で、AGN-242071がM1です。
さすがに、タイトルでStrong Pipelineと言って、いきなり切り捨てられることは考えたくないところです…ひとまず無事に認識されていると思います。
情報としては以上でしょうか。これから追加のリリースがあればいいのですが、いまは推測の中で待つしかありません。
M1、M4の生存は確認できましたので、ひとまずネガティブではなさそうです。ヒュミラで稼いだお金を注ぎ込んでくれるなら、むしろプラスになるかもしれません。
おわり