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そーせい、OX1受容体アンタゴニストHTL-0027772を創製

こんにちは。shiroshiroです。

twitterで先に上げているのでご存知の方も多いと思いますが、学会でオレキシンGPCR受容体OX1アンタゴニストHTL-0027772が発表されました。

先日はGLP-1アンタゴニストHTL-0026119が発表されたのですが、今度はOX1です。

オレキシンOX1とOX2と言えばメディチ(Medicxi)社じゃないの?という話ですが、今回の件はメディチとは違います。

他のプロジェクトと混同しないようにしつつ、解説していきましょう。

 

オレキシン(orexin)受容体とは

まずオレキシンについてですが、深入りは危険ですので、簡単に書いていきます。

オレキシンのはじまりは1998年。オレキシン受容体に結合する内因性リガンドOrexin-AとOrexin-Bが発見された時になります。

ポイント

・リガンド(Ligand)…
特定の受容体に、特異的に結合する物質。、特定のカギ穴(受容体)で使える。
・内因性リガンド(Endgenous Ligand)…
生体内で産生され、その生体内の受容体に結合するリガンドのこと。体内由来の物質。

筆者も知らなかったのですが、本件は日本人である櫻井武(さくらい たけし)現筑波大学教授によって発見されました。

櫻井氏は当時34歳。現在は睡眠研究の第一人者として活躍されています。(櫻井研HP:文豪を思わせるような顔写真あり)

 

そしてOrexin-AOrexin-Bの相手側、結合する受容体についてはOX1OX2の二つの受容体が存在します

さしずめAが1で、Bが2?と思われるかもしれませんが、ここはそうではなく、

・OX1受容体 : オレキシンAの親和性…オレキシンBの50倍高い
・OX2受容体 : オレキシンAとオレキシンB、親和性はほぼ同じ

という具合です。twitterの文章をまるまる使いますが、

 

過去20年間に様々な拮抗薬(アンタゴニスト)が特定され、2014年に不眠症治療薬としてOX1/OX2デュアル拮抗薬であるスボレキサントが承認。

しかし長年の努力にも関わらず、選択的OX1拮抗薬においてはHigh clearance(体内からの除去スピードが早い)や、乏しいPK特性(薬物動態:血中の濃度etc.)から、臨床に進出することができなかった。

つまり、OX1とOX2をうまく区別できないそうです。スイッチは二つまとめて押すしかできないわけですね。

ちなみにスボレキサント(Suvorexant)ですが、商品名はベルソムラという睡眠薬です。ひょっとしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

そして、「オレキシン受容体によって何が起きるのか」という点ですが、

ベルソムラの場合は、覚醒中枢システムを抑え、睡眠状態に移行させる。となっています。

※引用元:MSD Connect ベルソムラ作用機序(櫻井 武教授監修)(HP)

上図はベルソムラの商品説明なわけですが、オレキシンが眠りに大きく関わっているというのは、容易にわかりますね。

 

しかし副作用もあります。

治験での結果によると254例中53件(20.9%)。傾眠(4.7%)、頭痛(3.9%)、疲労(2.4%)の副作用が発生(参考)とのことで、OX1とOX2を一緒に押しているせいでしょうか?

ではそんな中、Selective OX1 Antagonist(選択的OX1拮抗薬)を開発したHeptaresの発表に移ってみましょう。

 

選択的OX1拮抗薬HTL-0027772

そーせいHeptaresはこのたび、8/28の ACS Fall 2019 National Mtg & Expo, Chemistry & WATER学会で、選択的OX1拮抗薬HTL-0027772を開発したと発表しました。

Discovery of selective OX1 antagonist HTL0027772 by structure-based drug design
"構造ベースの薬物設計による選択的OX1拮抗薬HTL0027772の発見”

https://plan.core-apps.com/acs_sd2019/abstract/1d53a3bb-6711-479e-b797-2b872d036c5c
Sarah Joanne Bucknell 1, Kirstie A Bennett 1, Giles A Brown 1, John Christopher 1, Miles Congreve 1, Robert M Cooke 1, Gabriella Cseke 1, Andrew S Doré 1, James C Errey 1, Fiona H Marshall 1, Jonathan Stephen Mason 1, Mark Mills 2, Richard Mould 1, Rebecca Nonoo 1, Jayesh C Patel 1, Mathieu Rappas 1, Nigel A Swain 1, Benjamin G Tehan 1
1. Sosei Heptares, Cambridge, United Kingdom
2. Sygnature Discovery Ltd, Nottingham, United Kingdom

背景は上で説明済みなので省略です。そのうえで、

「そーせいHeptaresには、構造決定で使用するために最適化されたサンプル生成を促進するStaR®テクノロジーと呼ばれるコアプラットフォームを有し、長年にわたりオレキシン受容体モジュレーターの発見にSBDDアプローチを追及してきました。」

「その結果、OX1とOX2受容体のオルソステリックサイトには、リガンド結合モードにおいて魅力的な多様性を持っていることが分かった」と表現しています。

ポイント

・オルソステリック(orthosteric)
活性部位の場所(オルソステリック部位)に直接結合することで、活性部位の活発化 or 不活化させること。(対義語:アロステリック(Allosteric))
・アンタゴニスト(Antagonist)
拮抗剤(きっこうざい)。神経伝達物質の働きを阻害する薬。スイッチをOFFにするイメージ。(対義語:アゴニスト(Agonist))
・SBDD(Structure Base Drug Discovery)…
構造ベース創薬。結晶構造情報をもとに、結合部位のカギ穴にあうカギ(薬)をデザインする手法。

つまり、OX1とOX2で結合の区別が可能になったということのようです。

そして、これを実現したのが社内に大量にある、リガンド-受容体X線共結晶データによってもたらされているとあります。やはりそーせいならではの強みですね。

 

Abstractの最後には、

「我々の選択的OX1プログラムは、コカイン中毒のための薬剤をターゲットとする創薬に大きな進展をはたした。」

「リード化合物HTL-0027772の発見に至ったその一連の開発について説明。最適化された薬剤の化学構造と特性が初めて明らかにされる。」

と。かっこいいあおり書いてます。よほどの自信があるということで解釈することにしましょう。

 

コカイン中毒とナルコレプシー、作動と拮抗

先ほどの締めで書かれていますが、そんな選択的OX1拮抗薬のターゲットは「コカイン中毒」です。

一応そーせいのホームページ上にも元から書かれています。

ではメディチのほうは?と言うとあちらは、アゴニスト(作動薬)でありナルコレプシー(過眠障害)狙いです。

したがって、そーせいのOX1は以下のような構図になります。

・OX1アンタゴニスト(拮抗薬)…
コカイン使用障害、リード化合物開発完了。そーせい自社開発品
・OX1アゴニスト(作動薬)…
ナルコレプシー、創薬フェーズ。メディチ社との合弁事業

なので、本件はメディチ社とは異なります。もう一つのパイプラインです

そもそも、オレキシン自体が神経学的に非常に複雑なので、このような現象が起こります。

あまり調べていませんが、OX1・OX2周りの関わり合いで行きますと、

・OX1/OX2デュアル拮抗薬:スボレキサント(ベルソムラ)…睡眠薬
・OX1拮抗薬:HTL-0027772…コカイン中毒
・OX1作動薬:メディチと開発中…ナルコレプシー
(・OX1拮抗薬:GSK1059865…アルコール中毒(グラクソスミスクライン))
(・OX2拮抗薬:セルトレキサント…不眠障害、うつ病(ヤンセンファーマ))
他デュアル睡眠薬多数

という具合に作動と拮抗がたくさんあります。

何しろオレキシンの発見以後様々な研究が行われ、"睡眠"と"覚醒"、"食欲"と"代謝"、"ストレス反応"、"報酬"と"中毒"、"鎮痛"といった具合に大変複雑です。(参考文献)

神経系は難しいですね。

 

これで、いよいよそーせいHeptaresは作動と拮抗、アゴニストとアンタゴニストの並行開発が本格化します。

HTL-0027772もいきなり出てきたわけではなく、前身の研究は私のほうで言及していました。

計算機科学の発表ですが、およそ1年前です。

やはり、なんだかんだ言っていろいろ動いていますね。

9/12のR&D Dayではこの話はしてくれるのでしょうか。話についていけなくなりそうなので、予習が必要かもしれません。

おわり

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