こんにちは。shiroshiroです。
まずはサンバイオホルダーの方々はおめでとうございます。
金曜日の日本市場はバイオセクターが大変元気でした。その大きな要因となったのが、サンバイオから出たIRです。
2019年09月19日
慢性期外傷性脳損傷を対象にした再生細胞薬SB623が米国食品医薬品局の「RMAT」の対象品目に指定
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4592/tdnet/1752201/00.pdf
要点としてはタイトル通り、SB623が「RMAT」の指定を受けることに成功したことがポイントとなります。
ではRMATとはなんでしょうか?
知っている方は少ないと思いますので、今回はそこをクローズアップします。
見出し
RMATとは
まず正式名称の確認からしたいと思います。
RMATとは、Regenerative Medicine Advanced Therapy:再生医療先進療法※日本語訳は複数ありますという名で、
基本的な立ち位置として、
・再生医療療法であること
(細胞療法・治療用の組織工学製品、ヒト細胞/組織製品またはその組み合わせ)
・重篤または生命を脅かす病気/状態を治療することを目的とすること
・予備的な臨床試験によって、その病気を治療するアンメットメディカルニーズが潜在的にあると示されている事。
という3要件を満たすものが対象となります。
※引用元 FDA「Regenerative Medicine Advanced Therapy Designation」
https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/cellular-gene-therapy-products/regenerative-medicine-advanced-therapy-designation
なので基本的に再生医療案件でないと、残念ながら対象外です。
そして3要件を満たす場合、
①開発者は米FDA(食品医薬品局)に対して、IND申請(治験申請)時orそれ以降に申請。
②FDA内の組織・先進治療部門(OTAT:Office of Tissues and Advanced Therapies)が、RMATの基準に合うか審査。
③結果が開発者の下に60日以内に通知される。
以上のような仕組みになっています。
実績はと言いますと、この仕組みがアメリカで2016年末に成立した「21 世紀の治療のための法律」(21st Century Cures Act)で設けられているので、2017年からのスタートです。
その3年間の中での結果は…
会計年度 | 申請数 | 承認 | 却下 | 取り下げ |
2017年 | 31 | 11 | 18 | 2 |
2018年 | 47 | 18 | 27 | 2 |
2019年 | 30 | 11 | 13 | 1 |
※2019年6月30日時点 (FDAホームページ)
というようになります。
11 / 31 = 35.5%
18 / 47 = 38.2%
11 / 30 = 36.6%
承認確率はだいたい30%なかばというところですね。
サンバイオの再生治療薬SB623(対象疾患:TBI)はこの低確率を突破したということになります。
RMAT指定のメリットは?
次に、RMATに指定された時のメリットについて、話題を移していきましょう。
ここからのお話は以下から引用しています。
「再生医療・細胞治療の規制及び開発の現状と課題」
五十嵐友香、佐藤陽治 日薬理誌151, 254-259 2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/151/6/151_254/_pdf
「アメリカの先進再生医療に指定」という響きは感覚的に非常にすごいと思わせますね。
当然、指定される以上、次のような優遇措置が用意されています。
【RMAT指定による優遇措置】
①製品開発及び審査を促進しうるサポートを受けることが出来る。
②優先審査制度(Priority Review)
③迅速承認制度(Accelerated Approval)
①に関してはFDAによる審査において、開発初期からサポート(アドバイス)が得られるということになります。
②は一言では、標準時間10ヶ月の審査が、6か月以内に短縮されるということ。
③は一言では、標準的試験のかわりにサロゲート(代用)または中間エンドポイントでの結果から販売承認を行うことが出来るようになります。(手続きのスキップ)※発売後の第4相試験が必要
そのような具合で、販売までの道のりが加速するわけです。
しかしちょっと待ってください。
アメリカでは、RMAT以外にもファストトラックであったり、ブレイクスルーセラピーなどさまざまな制度があることをご存知でしょうか?
逆にそれを知っていると、「じゃあ、RMATとファストトラックは何がちがうの?」という話になってしまいます。
もう少し奥に入って、アメリカの制度についてしっかりと理解していきましょう。
米FDAの優先審査制度については、RMATを含めると5つの制度が存在します。
①Accelerated Approval (迅速承認制度) (HP)
②Priority Review (優先審査制度) (HP)
③Fast Track (ファストトラック) (HP)
④Breakthrough Therapy (ブレークスルーセラピー) (HP)
⑤RMAT:Regenerative Medicine Advanced Therapy(再生医療先進療法) (HP)
①~④までは、対象が薬品全般を相手にしていますが、⑤RMATは再生医療限定です。
5つでくくるのが正しいのかわかりませんが、役割は似通っていますので、その違いを見ていきましょう。
米FDA優先審査制度の違い
まずは、①~④までの比較表を使って、横並びで見てみましょう。
※引用元 JPMA NEWS LETTER 「米国薬事セミナー」を開催 (PDF)
「開始年」を見て頂ければわかりますが、①~④まで制定順に並んでいます。
そして、最近のものになればなるほど、”過去の制度+~~”といった具合で加算されていきます。
まずは、①Accelerated Approval (迅速承認制度)(HP)から順に行きましょう。
迅速承認は前段でも話した通り、サロゲート(代用)または中間エンドポイントでの結果から販売承認を行うことが可能になります。
ここのポイントは、第3相完了前に販売承認を得ることが可能という意味です。
もちろん安全性評価の為に販売後の第4相試験は必要です。
(もっとも、迅速承認で販売開始して、第3相が終わったら有意差なして販促停止という事例(※LilyのLartruvo)もありますが…)
次に、②Priority Review (優先審査制度) (HP)
こちらも前段の通りですが、標準審査(10ヶ月)から優先審査(6か月)への短縮が可能になります。
では、③Fast Track (ファストトラック) (HP)ではどうなるでしょうか。指定を受けた医薬品は、
・必要なデータを収集するためFDAと頻繁な会議ができる。
・試験の設計、バイオマーカーの使用など、FDAと頻繁に書面でコミュニケーションできる
・①迅速承認、②優先審査の適格性を得る。(要基準クリア)
・ローリングレビュー(Rolling Review)が可能になる。
ポイント
通常、製薬会社が申請全体をFDAに提出するまで、生物製剤ライセンス申請(BLA)または新薬申請(NDA)のレビューは開始されないが、全体の提出を待たずに、BLA、NDA用資料で完成した分から順次の提出・審査を受けることができる。
つまり、③=①+②+FDAのサービス+Rolling Review という具合です。
そして、④Breakthrough Therapy (ブレークスルーセラピー) (HP)ですが、
・③ファストトラックと同様のメリット
・効率的な医薬品開発プログラムに関するより集中的なFDAガイダンス
・必要に応じて、FDA上級管理職と経験豊富なスタッフによるレビュー
だそうです。つまり④=③+FDAの更なるサービス。 (正直違いがよくわからない)
では、最後⑤RMAT:Regenerative Medicine Advanced Therapy(再生医療先進療法)ですが…
メリットの観点で見ると、④Breakthrough Therapy (ブレークスルーセラピー)と同じのようです。
どちらかというと対象品目や提出データのほうに違いがありますが、ここではその言及は省略したいと思います。(自分用)
以上のような形で、米FDAの優先審査制度の解説を行いました。
一応まとめますと以下のようになります。
まとめ
①迅速承認 … データの代用、中間地点からの販売承認
②優先審査 … 審査機関の短縮(10ヶ月→6か月)
③ファストトラック … ①+②+FDAのサービス+Rolling review
④ブレイクスルー … ③+FDAの更なるサービス
⑤RMAT … ④と同じ。(提出データに違いあり)
最後に念のためですが、指定をされたからと言って、販売承認間違いなしということはありません。
あくまでその時点で有望そうだから優先するわけであって、第3相臨床試験のデータがダメでプロジェクトが失敗することがあります。
ただ文献によっては、ブレークスルー指定で従来プログラムより2年以上早くなると述べるものもあるので、今回の件は大きなものとなるでしょう。
(参考:英文 / 訳文)
それでは、以上で終わりたいと思います。資料を慎重に調べながら行っていますが、もし何かありましたら教えてください。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
おわり