こんにちは。shiroshiroです。
10/1の火曜日にそーせいのほうから、QVM149のIRがリリースされました。
2019.10.01 適時開示
開発中の配合吸入剤QVM149がコントロール不良の喘息患者を対象とした第3相IRIDIUM試験において良好な治療結果を示した
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4565/tdnet/1754341/00.pdf
つい先日、QVM149の学会発表に関する記事をアップロードしましたが、
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ノバルティス、ERS2019そーせいQVM149で怒涛の学会発表
こんにちは。shiroshiroです。 本日twitter上で、QVM149の学会発表を猛烈な量ツイートしました。その内容をブログ上でも管理しておきたいと思います。 9/28-10/2の期間中、ERS ...
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実のところ、本IRはこの学会発表記事とは関連性のない、全く新しいものとなります。
ここにきて、大量の情報が出てきておりますので、少し現状を整理してみましょう。
見出し
第Ⅲ相IRIDIUM試験を通過
まずは、IRの内容について確認をしていきますが、一番最初に以下の通り、主旨が述べられています。
開発中の配合吸入剤 QVM149 がコントロール不良の喘息患者を対象とした 第Ⅲ相 IRIDIUM 試験において良好な治療結果を示した
1日1回吸入のQVM149がQMF149を対照とした臨床試験において主要評価項目を達成。統計的に有意な呼吸機能の改善を示した
「第Ⅲ相IRIDIUM(イリジウム)試験」、「QVM149対QVF149」というこのあたりの単語は、先日の記事では一切出ておりません。
ということで、本件は新材料になるのですが、この試験結果は非常に重要な内容です。
この第Ⅲ相IRIDIUM試験は、そーせいHPにもリンクが貼り付けられていますが、基本的な情報だけ見ても、いかにも第Ⅲ相らしく大規模試験だったのかが分かります。
- NCT02571777: 喘息患者を対象としたQMF149との有効性と安全性の比較試験
初回投稿日:2015年10月8日
完了予定日:2019年6月3日
参加予定者:2980人
なんと3000人弱の方がこの試験に参加しています。MiNA社の試験が30人程度なので、100倍近く規模が違います。
肝心の内容についてですが、
【主要評価項目】
・QVM149がQMF149と比較して、FEV1(呼吸機能検査:最初の1秒間に吐き出す呼吸量)を有意に改善。
・QVM149の忍容性はおおむね高く。安全性成績は他と同程度。
【副次評価項目】
・喘息コントロール質問票7(ACQ-7)が、QMF149に比較して高い改善。※ただし、本副次的評価項目は達成せず。
・QVM149は、アドエアと比較して、中等度~重度の喘息憎悪率の低下が観察。
3000人規模の試験で主要評価項目が達成されたのでまずはホッとしています。
ただし、副次高評価項目では、ACQ-7が良い成績を示すも目標には達成せず。
この副次評価項目は15個もあり、この結果がどの程度の意味を持つのかは筆者も分かりません。
そこでひとつ、別のほうの試験を見てみることにします。
ノバルティスの試験計画(PLATINUMとは)
そーせいHeptaresの視点から見てみますと、IRIDIUM試験のみとなるのですが、ノバルティス社のほうからは実はもう一件のリリースがされています。
QMF149の評価を行った第Ⅲ相PALLADIUM(パラジウム)試験というのも行われて、良好な結果を得ているとのことです。
Novartis announces positive results from Phase III PALLADIUM study of inhaled combination QMF149 in patients with uncontrolled asthma
ノバルティスは、コントロールされていない喘息患者における吸入併用QMF149の第III相パラジウム試験の肯定的な結果を発表しました
※グーグル翻訳(HP)
※QVM149 IRIDIUM側リンク(HP)
QVM149はICS/LABA/LAMAの3合剤で、QMF149はICS/LABAの合剤ですね。
そして実を言うと、こちらのACQ-7は達成されているそうです。つまり、
QMF149 vs アドエア … ACQ-7目標達成
QVM149 vs QMF149 … ACQ-7目標未達
ですので、QVM149が全く無意味というわけではありません。
どちらかというと、QVM⇔QMF間でどのような目標設定をしたかがポイントに見えそうです。あまり深く考える必要はないかもしれません。わかりませんが。
さて、このPALLADIUM試験と先ほどのIRIDIUM試験は、あと二つの試験と併せて、
QVM149およびQMF149の開発をサポートするNovartisフェーズIII臨床開発プログラムと位置付けられています。
その名も、PLATINUM(プラチナ)臨床開発プログラム
後の二つの試験というのは、QUARTZ(クオーツ)試験、ARGON(アルゴン)試験というのですが、それぞれの役割は下のようになっています。
【PLATINUM臨床開発プログラム】
①QUARTZ試験 … 低用量QMF149(ICS/LABA)とモメタゾン(ICS)の比較
②PALLADIUM試験 … QMF149とアドエア(ICS/LABA)の比較
③IRIDIUM試験 … QVM149(ICS/LABA/LAMA)とQMF149の比較
④ARGON試験 … QVM149と、アドエア+スピリーバ(LAMA単剤)の比較
上から3つがうまくいけば、アドエアの上位互換としての役割を持つことになるでしょう。(うまくいった)
そして、ARGON試験がうまくいけば……どうなるでしょうか?
残る試験は?
前段でもうネタばらしをしているようなものですが、QVM149の治験もいよいよ大詰めになってきました。
そーせいのHP上で掲載されている5つの臨床試験ですが、残すものは中央のARGON試験を残すのみです。
- NCT03100825: 日本における喘息患者を対象とした長期安全性試験
日本人向け喘息試験。EMS2019で発表済み。無事完了。
- NCT03108027: Assess Bronchodilator Effect QVM149 Dosed Either in the Morning or Evening Compared to Placebo in Patients With Asthma (QVM149)
EMS2019で発表済み。無事完了。
- NCT03158311: サルメテロール/フルチカゾン+チオトロピウム(ARGON)とのトリプルコンビネーションの比較試験
結果未発表。ただし、2019年9月20日の段階で治験完了のデータ更新有り。
- NCT03063086: サルメテロール/フルチカゾンの固定用量組み合わせと比較した2用量の気管支拡張剤効果および安全性の評価試験
EMS2019で発表済み。無事完了。
- NCT02571777: 喘息患者を対象としたQMF149との有効性と安全性の比較試験
10/1にそーせいよりIRにてリリース済み。無事完了。
とはいえ、試験は完了していますので、じきにARGON試験の結果もリリースされるのではないかと思います。
これまでの3合剤vs2合剤の対決とは違い、疑似的とはいえ3合剤同士の対決になるので、結果はどのようになるでしょうか。
上手くいくにしろ、いかないにしろ、喘息に対してアドエアへの優位性を武器に販売はするようにも感じますが…そこはよくわかりません。
仮に上手く行くとして、今度はGSKのテリルジ―や、AstraZenecaのビレーズトリが喘息適応を取り次第、3合剤同士の対決となります。
大詰めという割には、まだまだ先がありますね。
最後に蛇足ですが、単語の整理をしました。すでに把握されているよという方はスキップで大丈夫です。
商品名と成分
・QVM149…
ICS/LABA/LAMAの3合剤。
ICS…フランカルボン酸モメタゾン / モメタゾンフロエート
LABA…インダカテロール酢酸塩
LAMA…グリコピロニウム臭化物
・QMF149…
ICS/LABAの合剤
ICS…フランカルボン酸モメタゾン / モメタゾンフロエート
LABA…インダカテロール酢酸
・アドエア…
ICS/LABAの合剤。GSK商品名。
ICS…キシナホ酸サルメテロール / サロメテロール(商品名:セレベント)
LABA…プロピオン酸フルチカゾン / フルチカゾン(商品名:フルタイド)
・スピリーバ…
LAMAの単剤。ベーリンガー・インゲルハイム商品名
LAMA…チオトロピウム臭化物 / チオトロピウム
・テリルジー…
ICS/LABA/LAMAの3合剤。GSK商品名。※COPD適用
ICS…フルチカゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アニュイティ)
LABA…ビランテロールトリフェニル酢酸塩(※単剤では商品無し)
LAMA…ウメクリジウム臭化物(商品名:エンクラッセ)
・ビレーズトリ…
ICS/LABA/LAMAの3合剤。AstraZeneca商品名。※COPD適用
ICS…ブデソニド(商品名:パルミコート)
LABA…ホルモテロールフマル酸塩(商品名:オーキシス)
LAMA…グリコピロニウム臭化物
ICS/LABA/LAMA
・ICS(Inhaled corticosteroid)…
吸入ステロイド薬。喘息治療の第一選択薬。強力な抗炎症効果がある。
・LABA(long-acting β-agonists)…
長時間作用性β2刺激薬。気管支平滑筋を弛緩させ、気道を広げる薬剤。効果が長時間続くため、発作の予防に用いる。
・LAMA(long-acting muscarinic antagonist)…
長時間作用性抗コリン薬。COPD治療の第一選択薬。気管支の収縮を抑え、気道を広げる薬剤。
↑の整理を行った意味合いは何? と聞かれれば、ARGON試験でいうアドエア+スピリーバというのは、テリルジーとは違うという意味になります。。
以上です。ありがとうございました。
おわり