こんにちは。shiroshiroです。
そーせいHeptaresの学会発表や、AZD4635関連など、秋学会の情報がたくさん出て来ております。
これこそ実りの秋(?)ですね。
昨日はTwitter上で、MiNA Therapeuticsの学会発表をひたすら取り上げておりました。
その内容を取り上げつつ、少しいまのMiNA社の現状について確認していきましょう。
見出し
OTS2019学会
MiNA社の学会発表は、この秋シーズンだけでも、CICON19、ESMO2019などすでに2件は取り上げさせてもらっています。
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そーせい、MiNA社もMTL-CEBPAで学会発表大量投下&IR
こんにちは。shiroshiroです。 おとといのツイートラッシュは、QVM149だけでなく、MiNA Therapeutics社でもその製品の学会発表が出ております。 今回はそちらについて、すでにツ ...
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そして、今回の学会で3件目となりました。その学会が、
15th Annual Meeting of the OTS
(OTS:Oligonucleotide Therapeutics Society:オリゴヌクレオチド・セラピューティクス・ソサエティ)
というものです。一応ここでは、OTS2019で呼称します。年次総会のことですね。
少し前になってしまいますが、2019年10月13~16日の期間で開催されておりました。
前回記事のERNEST 1st meetigと併せたわけではありませんが、今回も発表としては4件でした。
①がん免疫療法:5つの遺伝子について活性化
②MTL-CEBPA(1):薬剤が身体のいろいろな箇所に分布する報告
③GalNAc-saRNA:MTL-CEBPAとは異なる、NASH/NAFLD狙いの研究
④MTL-CEBPA(2):骨髄細胞狙いの研究結果
①~③がポスター発表で、④はトークセッションでのプレゼンテーションでした。
OTS2019、ポスター3件の解説
【1件目】
「①がん免疫療法:5つの遺伝子について活性化」です。
Identification of small activating RNAs that can upregulate immune activation targets for cancer immunotherapy
ガン免疫療法の免疫活性化標的を上方制御できるsaRNAの同定
そーせい MiNA / 学会
Identification of small activating RNAs that can upregulate immune activation targets for cancer immunotherapy
ガン免疫療法の免疫活性化標的を上方制御できるsaRNAの同定10/13-15のOTS2019で、MiNAのDavid C Blakey氏が1st。HP上で未UPにつき写真のみ。 pic.twitter.com/u8ugEGimTt
— Shiroshiro (@Shiroshiro4565) November 5, 2019
[Twitter本文]
遺伝子をアップレギュレート(上方制御)させ、がん免疫療法に使用できるかの研究。
つい最近の研究(↓)とやや似ている。標的遺伝子5つに対し、それぞれsaRNAを作成。
それぞれ、IL23A(4.9倍), IL-36g(3.5倍), OX40L(6.7倍), UCP2(1.9倍), APLNR(5.4倍)の上方制御を観測。
saRNAによって誘導された標的タンパク質の増加は、免疫蛍光,ELISA,western blotのいずれかの方法によって確認された。
要約すると、saRNA技術は五つの免疫ターゲットに適用され、腫瘍内注射や全身送達を介したデリバリーによって、がん免疫療法における新たなアプローチとなり得る。
[コメント]
MiNA社のsaRNA製品であるMTL-CEBPAを使っているわけではないようです。
saRNAによって、遺伝子をアップレギュレート(上方制御:活性化で理解すれば楽)させるのですが、その狙う遺伝子用にsaRNAをデザイン。
5種の遺伝子をうまく活性化させることが出来ているようです。
そして、活性化させた結果、狙って出そうとしていたタンパク質も無事に増加。
(↑ちゃんと機能している)
いまはまだ、理屈の部分を整えている段階ですので、動物や人への投与はまだ先となるでしょう。
【2件目】
「②MTL-CEBPA(1):薬剤が身体のいろいろな箇所に分布する報告」です。
Investigating the biodistribution of MTL-CEBPA reveals delivery of small activating RNA into CD34+ cells and different types of immune cells in vivo
MTL-CEBPAの体内分布の調査結果、in vivo(体内)でのCD34+細胞など免疫細胞へのsaRNAの送達が明らかに
そーせい MiNA / 学会 / MTL-CEBPA
Investigating the biodistribution of MTL-CEBPA reveals delivery of small activating RNA into CD34+ cells and different types of immune cells in vivo
10/13-15のOTS2019で、MiNAのAlbert Kwok氏が1st。https://t.co/XXzyx85BHa pic.twitter.com/CB6O2184IL
— Shiroshiro (@Shiroshiro4565) November 5, 2019
[Twitter本文]
いま第1b相中のMTL-CEBPAで、実はさまざまな場所の免疫細胞にsaRNAが届いているという話。
MTL-CEBPAは進行性肝細胞がん(HCC)で第1b相試験中。血液や骨髄でも発現の増加が分かっている。
in vivo(生体内)で複数の組織および細胞タイプに作用することを考慮し、体内分布に関する知識の拡大を試みた。
Wisterラットに、MTL-Cy3-CEBPAをSMARTICLES®に入れて注射。血液、骨髄、脾臓のさまざまなタイプの免疫細胞で、MTL-CEBPAの取り込みがあったが、リンパ球では取り込みが見られなかった。
結論として、MTL-Cy3-CEBPAはCD34+細胞と一部の骨髄細胞に送達できるが、リンパ球には送達できない。
これらのデータは、MTL-CEBPAが免疫系に調節的な影響を与えることが出来ることを示している。
届く、届かないのマップはこちらから。(+が多いほど届く)
Monocytes(単球:白血球の一種)
Macrophages(マクロファージ)
Dendritic Cells(樹状細胞)
Neutrophils(好中球:白血球の一種)
CD34+ cells(造血幹細胞)
T/B cells(T細胞、B細胞)
Bone Marrow(骨髄)
Spleen(脾臓)
[コメント]
こちらは、MiNA社の主力saRNAである、MTL-CEBPAのお話です。
基本姿勢として、一番最初にひとこと要約を入れるようにしているのですが、「MTL-CEBPAで、実はさまざまな場所の免疫細胞に届いている」とさえ、理解して頂ければいいと思います。
「MTL-CEBPAをSMARTICLE®に入れる」ことはいつもと変わりません。
ここでの学びは、「血液・骨髄・脾臓で取り込まれる。」「リンパ球には取り込まれない。」です。
脾臓は何かの役に立つでしょうか。未知数ですね。
リンパ球には取り込まれないというのは、別にネガティブなことではありません。
基礎研究の内容である限り、学びを得たことが何より重要と思います。
【3件目】
「③GalNAc-saRNA:MTL-CEBPAとは異なる、NASH/NAFLD狙いの研究」
Development of GalNAc-conjugated saRNA targeting HNF4A for treatment of metabolic disease
”代謝性疾患の治療のためのHNF4Aを標的とするGalNAc修飾saRNAの開発”
そーせい MiNA / 学会
Development of GalNAc-conjugated saRNA targeting HNF4A for treatment of metabolic disease
”代謝性疾患の治療のためのHNF4Aを標的とするGalNAc修飾saRNAの開発”10/13-15のOTS2019で、MiNAのJon Voutila氏が1st。https://t.co/o9tkMJqad2 pic.twitter.com/I9lU6QEmN5
— Shiroshiro (@Shiroshiro4565) November 5, 2019
[Twitter本文]
超大物ターゲット、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とNAFLD(同脂肪肝疾患)を狙った新標的「HNF4A」を狙ったラット実験で有意な結果が出たとのこと。
肝細胞核因子4α(HNF4A)は、肝臓に豊富な転写因子であり、肝機能の主調節因子である。慢性肝疾患によってHNF4Aは下方制御され、障害のレベルと相関する。
そこで我々は、in vitro(試験管内)、in vivo(生体内)で齧歯類のHNF4A遺伝子を狙ったsaRNAを開発。
ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーと複合させ、高脂肪モデルラットの体重、肝臓コレステロール、及び血糖を有意に減少させた。
NASH/NAFLDを治療するため、HNF4A saRNAの皮下注射の為、肝細胞に特異に送達するGalNAc修飾(※図)HNF4A saRNAを開発。
投与によって、肝臓でのHNF4A発現を上方修正した。用量およびスケジュールの最適化は現在も継続中。
これらのデータは、HNF4AがNASH/NAFLDの治療の有望な標的であることを示す。
[コメント]
「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」は非常に大きなテーマです。
基本的にどの治療薬候補にも、有望なデータが出ておらず、だれもこの領域に旗を置けていません。
ここ最近ではギリアドのselonsertibが第3相で失敗しました。(’19年2月)
本研究は、基礎研究レベルでラットを相手にしています。
MiNA社が作ったsaRNA品は、
「①げっ歯類のHNF4A遺伝子を狙ったsaRNA+ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー」と、
「②肝細胞(ヒト?)のHNF4A遺伝子を狙ったsaRNA+GalNAc」の二つです。
GalNAc(N-アセチルガラクトサミン)は、肝臓で特に取り込まれやすいルアーとでも。
saRNAという竿と、GalNAcというルアー、魚が食いつくのではなく、肝臓が取り込みます。
①はラットの体重、肝臓コレステロール、及び血糖を下げたそうです。面白いですね。ヒトでこうなったらテレビが飛びつきそう。
②は狙い通り、肝細胞でのHNF4A遺伝子がアップレギュレートされたようです。今の段階では順調そうとだけ言っておきましょう。
トークセッションの4件目+いまのラインナップ
【4件目】
「④MTL-CEBPA(2):骨髄細胞狙いの研究結果」
Activation of CEBPA in myeloid cells by saRNA in HCC patients: The emergence of an immunomodulatory switch for anti-cancer therapy
”HCC患者のsaRNAによる骨髄細胞のCEBPAの活性化:抗癌療法のための免疫調節スイッチの出現”
そーせい MiNA / 学会 / MTL-CEBPA
Activation of CEBPA in myeloid cells by saRNA in HCC patients: The emergence of an immunomodulatory switch for anti-cancer therapy
10/13-15のOTS2019で、MiNAのVikash Reebye氏が1st。トークセッションではNagy Habib氏が登壇。https://t.co/8GdTPxziNA pic.twitter.com/YakCraO6z8
— Shiroshiro (@Shiroshiro4565) November 5, 2019
[Twitter本文]
ここでは、CEBPA-saRNAを投与された患者のWBC(白血球)で観察された定量的変化を初めて提示する。
なお、現在HCCまたは続発性肝がんの患者を対象に第Ⅰ相容量拡大試験を実施中。
MTL-CEBPAはいくつかの部分奏功、完全奏功とともに良好な安全性プロファイルを得ている。
治療では、血中白血球中の522のタンパク質、656の遺伝子の発現に変化を与え、すべての患者で35の主要な標的が影響を受け、治療によりCEBPA発現が増強される。
[コメント]
主力製品「MTL-CEBPA」が「部分奏功or完全奏功できていて、安全」という話は第Ⅰ相治験結果発表でありました。
ここでは、HCC(肝細胞がん)向けに行っている治験で、血中白血球の様子を確認したということがメインです。
アブストラクトはあまり内容が無かったので、「主要な35の標的がMTL-CEBPAの投与によって影響を受けた」、「CEBPA遺伝子の発現が増強された。」ぐらいにしか、理解できませんでした。
35の標的とか、522のタンパク質とか、656の遺伝子とはいったい何かは不明です。
【まとめ】
ひとまず内容としては以上になります。改めて、4件の説明を確認しましょう。
①がん免疫療法:5つの遺伝子について活性化
②MTL-CEBPA(1):薬剤が身体のいろいろな箇所に分布する報告
③GalNAc-saRNA:MTL-CEBPAとは異なる、NASH/NAFLD狙いの研究
④MTL-CEBPA(2):骨髄細胞狙いの研究結果
MiNA社というと、現在の第1b相の肝細胞ガン向け、MTL-CEBPA治験が目につきますが、他のこともやっています。
ホームページ上のパイプライン表を持ち出してみると…
4件の発表の内、2件目は身体の分布という基礎研究の様子ですが、残りについては、「免疫療法系」「MTL-CEBPA+骨髄系?」「NASH/NAFLD狙い?」というように、各パイプラインに合致してきます。
(※オープンになった時に違っていたらすみません。)
なので、裏側ではMiNA社もしっかりとうごいていると。これだけは言っておきたかったところです。
ちなみにですが、あまりに数が多すぎて、パイプラインの把握がしきれないそーせいホルダー(自身含む)の為に、申しておきますと。
①のがん免疫療法は、そろそろ第Ⅰ相治験が始まります。(Clinical Trialsでは、11月1日)
A Study of MTL-CEBPA in Combination With a PD-1 Inhibitor in Patients With Advanced Solid Tumours (TIMEPOINT)https://t.co/MnJOBf5YaU
— harukun (@harukun82169992) September 26, 2019
RT
MiNA社の前臨床にあった免疫チェックポイント併用の1相治験にまもなく入りそうということ。開始は11/1予定。過去は↓参照。https://t.co/04Wska5G43
— Shiroshiro (@Shiroshiro4565) September 26, 2019
1例目の投与の際には、何かしら発表されるでしょうか?
発表されたところで、株価への影響はないでしょうが、それでもリリースは楽しみですね。
おわり