(本記事はあくまで一個人の考えを述べたものであり、値上がり・値下がりに関する言及はありません。投資助言ではなく、自己責任によるご判断をお願いいたします。)
F351によって、大荒れの相場となっているジーエヌアイが要注目のデータを出してきました。
F351第2相のトップラインデータです。
2020.10.23 IR
(開示情報の経過)中国における肝線維症治療薬F351の第2相臨床試験の結果について
肝繊維症の患者に対してもそうですが、肝硬変の患者にもF351は有効であるという主旨の発表になっています。
ただ、そうはなっているものの専門用語が飛び交い、これが本当はどういうものなのかいまいちよくわかりません。
という事で本記事のテーマは、
「ジーエヌアイのF351第2相データで、管理人が気になった点を調べてみた。」
です。読んでいただいた方の疑問に100%答えているかはわかりませんが、何かしらの参考になれば幸いです。
ちなみに買い推奨でも売り推奨でもないので、「この銘柄は値上がりしますか?」という質問はNGです。
ただ、F351において、特に肝硬変で本当に3相スキップが可能なのか?はかなり判断の難しいポイントになるでしょう。
という事で見出しです。
Ishakスコアとはなにか
有効性の解析結果を見る前に、まずはIshakスコアというものを理解しなければなりません。
個人的に検索して、ヒットした文献がこちら。
Ishakスコアとは
Ishakスコア…
慢性C型肝炎に対処する際の繊維症と壊死の評価に最も広く受け入れられているスコアリングシステム
IRでも6段階によって評価をされていますが、その6段階とはなにかも合わせて知る必要があります。
同記事には、繊維症スコアについては
0. 繊維症なし
1. 短い繊維性中隔の有無にかかわらず、いくつかの門脈領域の線維性拡張
2. 短い繊維性中隔の有無にかかわらず、ほとんどの門脈領域の線維性拡張
3. ポータルからポータルへのブリッジングを伴う、ほとんどのポータル領域の線維上の拡張
4. マークされたブリッジング(ポータルからポータルおよびポータルから中央)を備えたほとんどのポータル領域の線維上の拡張
5. 時折結節を伴う顕著なブリッジング(不完全な肝硬変)
6. 肝硬変(可能性または明確な)
という表現になっています。細かい単語の意味については省略させてください。
同記事内でも指摘されていますが、主観的な判断が伴う指標となっていますので、それなりに注意が必要そうです。
IRでいうIshakスコアの1以上の低下とは、「0~6の段階まである症状のうち、6→5なり、4→1なり、スコアが下がって繊維症の症状が緩和された」という意味合いになってきます。
では、管理人が個人的に感じたこととして、Ishakスコアが1以上下がるという評価軸は一般的なのでしょうか?
その点について、さらに別のものをいろいろ探してみました。
「Ishakスコアが1以上低下する」という評価軸でいいの?
この疑問に対しては、ほかの治験情報を参照することが先決という事で、GNIの本治験で同時に使われていたエンカテビルの情報を探しました。
BARACLUDERを用いた長期治療成績によりB型慢性肝炎を原因とする肝障害が軽減される可能性を示唆
エンカテビル(BARACLUDER)の第2相~第3相試験ETV-901では、各試験でエンカテビルを投与して、中央値6年の期間にわたり、肝生検を行っています。
結果としては、患者57人のうち96%において肝組織像に改善が見られた。とされています。
その根拠として用いられていたのが、
・Knodell 壊死炎症スコアの2ポイント以上の減少 & Knodell線維化スコアの悪化がない
・Ishak線維化スコアの改善(1ポイント以上の減少)
という形でこれを肝障害の提言の指標としています。
GNIでは、Knodellのスコアはどこに行った?という疑問はありますが、Ishak線維化スコアの改善(1ポイント以上)というのは実際に使用実績もある指標のようです。
ただ、ブリストルマイヤーズの引用記事では、もう一つ気になる表現があります。
「ベースライン時の線維化スコアが2%以上であった患者43人のうち、Ishak線維化スコアが2ポイント以上減少した患者の割合は58%でした。」
そう。複数ポイントの減少についての記述です。GNIのIRではこれがありませんでした。
繊維症スコアが6→5になったというのは、ある意味"完全に肝硬変"が"多分肝硬変"になったということですので、複数ポイントの改善の情報は確認してみたいとは思います。
肝繊維症・肝硬変に対して本当に効いているのか
プラセボ群との比較においては、効いているという事はこのデータを見る限りいえそうです。
P値においては、
【肝繊維症】
FAS(Full Analysis Set…最大の解析対象集団):0.0245
PPS(Per Protocol Set…治験実施計画書に適合した対象集団):0.0058
【肝硬変】
FAS:0.0407
PPS:0.0201
という事で基準となる0.05を下回っています。FASの方でもクリアしていますね。
ただ肝繊維症はともかくとして、肝硬変の場合は、F351投与15人、プラセボ4人という事で人数が少ないのは気になります。
F351群でもプラセボ群でも、1人がなにか異なる結果だったらP値は違う結果になることでしょう。
まかり間違って、プラセボ群で2人改善されていたら、P値が跳ね上がっていたかもしれません。
このあたりが、対象人数が増えたときにどうなるか、なかなか油断ができない気がします。
特に肝硬変の第3相スキップという事が本当にできるのかどうか、科学的なデータもそうですし、中国当局側の判断によっても左右されるので、どうなるか非常に難しいと思います。
この辺りが投資家として判断の求められるところでしょう。
飲酒好きの人の肝硬変だったら断酒で治ってしまわないか
本筋とは脱線してしまいますが、なんとなく肥満体のひと、アルコール中毒の人とかがいた場合は?
という疑問がわいてきたので、そもそもの治験の情報について改めて再確認を行いました。
このリンクは、今回の第2相試験の治験内容となっています。
肝繊維症、肝硬変の人が断酒をして、症状の進行が止まっているだけなのでは?という、若干うがった見方を排除するために、除外基準を確認してみましたが…
【除外基準】
・BMI指数>30
・アルコール性、薬物誘発性、遺伝性、免疫性およびその他のウイルス性および非ウイルス性慢性肝炎の患者。
ちゃんとありましたね。
肥満、アルコール性その他の患者は対象には組み入れていないので、そこは避けているようです。
という事で、本試験の患者は慢性B型肝炎による肝繊維症を患った患者という事であっているようです。
おわりに
という事で今回のGNIの件について、個人的に気になったところを調べてみました。
それにしても、このIRはもう少し早く出してあげてほしかったですね。
凄まじい価格の上下動によって、このIRを出す前に損切りしてしまった人も相当数いるはずなので、こういったアクションはあまり好きではありません。
下値で拾うためにも、振り落とされないためにも、余裕のあるポジションで構え、往復ビンタをもらわないように。
そんなことを書いた記事もありますので、よかったら見ていってください。
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本記事は、GNIに対して、買い推奨でもなく売り推奨でもありませんが、相場にむしり取られないように気をつけましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。